
数年来の友人と話しているとき、突然今まで見たことのないその人の一面に触れることがある。当たり前の話、時が流れるにつれて人は色々な考えや別の顔を持っていくのだけど、他人のそれを発見することは稀なことではないだろうか。たとえば先日、
友人であるマイク・ミンチントンにボードをオーダーしにいったときに彼の"意外すぎる"側面を垣間見た。シェイプ暦40年を超えるカリフォルニアでもトップシェイパーとして活躍するマイクは、現在ロバートオーガストサーフボードのメインシェイパーを勤めているが、雑誌などにフィーチャーされることはほとんどなく、個人的にはメディアからとても過小評価を受けているクラフトマンのひとりだと感じている。普段はユーモラスでウィットに富んだ彼の、普段見せることのないナイーブな素顔を今回recalmagは引き出すことに成功した。
Recalmag (以下、R): いつごろサーフィンをはじめたの?
Mike M. (以下、M): 私が8歳くらいの頃かな。ビーチの近くに住んでいてね、(サーフィンをすることが)適当なことのように思えたんだ。ビーチにあったボードを借りてパドルアウトして、初めて波にのったんだ。結構痛い目も見たけど、楽しかったし、そんな感じで続けていったんだよ。
R: 初めてサーフィンした場所は?
M: サンセットビーチ、カリフォルニア。
R: シェイピングはいつ始めたの?
M: 13か14のころ、壊れたボードをベリーボードか何かにシェイプし直したことがあるんだけど、それが最初に削ったボードだと思う。1970年頃に、普通のサーフボードと呼ばれるものをちょくちょく削り始めた。そのあと、1980年あたりに職業シェイパーとして活動しだしたんだ。自宅のガレージでシェイプをしていたんだよ。当時はそれこそ友達や自分に対して板を作っていたんだけど、それがうまいこといってね。そんな時にロバート(・オーガスト)と出会って、それからずっと彼と一緒に仕事をしている。もうかれこれ23年にもなるな。
R: シェイピングやサーフィンで模倣となるような人はいた?
M: いっぱいいたよ。だから特定の一人とか、そういう風には絞れないかな。みんなそれぞれ個性があるしね。いつからか、あまり他のシェイパーやサーファーに気を向けなくなったな。自分のシェイピングにもっと集中したかったんだ。色々なシェイプを試したり、より完成度の高いボードを削りたいと思うようになった。強いてあげるなら、ランス・カーソンはお気に入りだね。彼と仕事もしたし、ランス用に何本も板を削ったよ。他にもビッグネームをあげれば、マイク・ドイル、コーキー・キャロル、そしてポール・ストラウチたちにもボードを提供していた。ほかにもミッキー・ドラとか、ウイング・ナットとかそういう連中たちさ。

R: コンテストは?
M: シティーコンテストだったり、クラブコンテストだったり、結構いっぱいでたよ。ただ優勝とかは、しなかったね。あまりコンテストというもの自体に没頭してなかったかな。ただ楽しかったからやっていただけで。最初に参加した大会は、たしか1982年だったかと思う。カイル・ヘイワードやPTあたりに次いで4位だったな。まぁ、サーフィンは私にとっては楽しみでしかないかな。
R: カスタマーに板を削るとき、最も気にかけていることってなに?
M: コミュニケーションだね。カスタマーが本当に欲しがっているボードを削るためには最も重要なことだ。私は、私が削った板を受け取った全てのサーファーにハッピーになって欲しいから、彼が求めているもの、彼のスタイルにあったサーフボードを削りたいんだ。だから私とカスタマーのコミュニケーション、これに尽きる。
R: じゃあどんなタイプのサーフボードを削るのが好き?
M: もちろん全部さ。
R: マイクがサーフィンを始めた頃と今では、サーフカルチャーって変わってきている?
M: うん、とにかく今は滅茶苦茶込み合ってるよな。当時も混んでいたけど、今ほどではなかった。探せば空いているスポットはいくらでもあったし、それにもっとフレンドリーな感じだったよ。単純に、もっと面白かったかな、私にとっては。新しいものだったからかもしれないね。もう長いこと波乗りを続けているからな。でもきっと、当時はシンプルでベーシックなスタイルが息づいていたから、そう感じるのかもしれない。いま私たちが「ロングボード」などと呼んでいるものは、ただ「サーフボード」と呼ばれていたんだよ。海に出て、友達と波をシェアして楽しむ。あの頃は、ビジネス的な要素はひどく低かった。そう、現在のサーフシーンがビジネスとしてぶくぶくに膨れ上がっているのは確かだ。ウエットスーツカンパニーや、クロージング、なんでもありだろう?みんなサーファーになりたいし、サーファールックを目指しているし。当時、サーフィンが好きだった理由はたぶんサーフィンがサブカルチャーだったからなんだろうな。いまじゃ、世界中でメインストリームだ。素晴らしい流れだと思うよ。本当に。ただあの頃は、過ごしやすかったのは確かだ。
年代によって、多くの素晴らしいサーファーたちが現れた。ただ彼らのサーフィンを見て本当に楽しいと思えたのは、私にとっては60年代から70年代までだ。あとは50年代。この頃は、よりスタイルが大切だったんだよ、今に比べてね。今じゃ、いかに波の上でスケートボードのような動きができるかどうかばかり競っている。パーフェクトで、素晴らしいウェーブセットアップの中で、飛んだり跳ねたり、そんなことばかりしているように見えるんだ。波の上ではなく、いかに空中にいられるかとか、そんな感じで。いや、別に彼らを非難しているわけじゃないし、本当にすごいことをやっていると思うよ。グルービーだし、キッズはみんな好きだし。ただ、私の好みではないかな。最近のサーフコンテストを見ていても、みんな同じような動きしかしていない。リップして、リップして、リップして、「お、飛んだ。あ、回ってる」とかいった具合にね。あまり共感できないね。もちろん彼らの身体能力というものはありえないほどに研ぎ澄まされている。でも観ていて、楽しいものではないんだよ。みんな一人一人、確かに違うけれど、結局やっていることは一緒。まぁ、コンテストを観るのならば、エディーやマーヴェリクッス、あとはパイプラインを見るほうが良いかな。サーフィンの能力、ウェーブナレッジが問われ、なによりも自分が死ぬかもしれないという事実が、サーファー間に違いを生むのだと思う。
R: サーフィンのエッセンスって何だと思う?
M: エッセンス、か。私にとっては、波に乗るという行為そのものではないように思える。というよりは、波が良い場所を探しに出ること、かな。それが私にとって大事なことだからこそ、70年代が恋しいのかもしれない。波が一番良いところを探しに出て、見つけたスポットに先客は誰もいない、そしてパーフェクトな肩・頭くらいの波が割れている。そういった喜びが、私がサーフィンをしている理由なんだ。未知のサーフポイントを、友達とシェアする喜び。当時は、たとえそのポイントで既に誰かがサーフィンをしていても、メローで、クリーンな雰囲気だった。たぶん波も良かったし。サーフィンをするにあたり、私はコンディションをとても気にするんだ。晴れていて、波の形もよく、水面はグラッシーで、オフショア。そして場所のセットアップも大事だ。ポイントブレイク。そうだな、たとえば2フィートの小波でも、他の条件が良くてセットアップもよかったら最高だ。そんなときは6フィート、8フィートの波でサーフィンするのと変わらない楽しみを得ることができる。私にとって、それがサーフィンの素晴らしいところなんだ。
R: 自分のサーフスタイルをどう捉えているの?
M: 難しいな。たぶん、カジュアル・スタイル。そして70年代っぽくサーフィンしていると思う。80年代の影響も若干受けているかな。波によりけりだけどね。ボードをターンさせるのが好き。当時はノーズライドとか、そういったオーセンティックなマニューバーもした。ただやり尽くしたというか、今は特定のブレイクでたまにティップライドするくらいかな。大まかにいえば、パフォーマンス系のサーフィンをすると思う。ただ現在基準の「ハイパフォーマンス・サーフィン」ではないよ。スケートボードとか、もしくはスケートボードの乗り方っぽいサーフボードの乗り方とか、分からないからね。私は、サーフィンを通じて波の一部になりたいんだ。波と一緒に、フローするということ。それって、モダンサーフィンが見失った要素だと思う。現在多くのサーファーは、波と共鳴していない。むしろ波を攻撃しているというか、殺しているというか、ズタズタに切り裂いているだろう。私にとって、海や波とても美しいものだ。ただ彼らはそういった美しい波に対して、攻撃を挑んでいるように見える。それって、自然の美しさを取り除いているように私には映るんだ。まぁ、見た目よりは楽しいんだろうけどね。

R: ショートボードレヴォリューション以降、その流れは加速した?
M: そう思う。そのあたりから、サーファーは攻撃的なマニューバーに傾倒していったんだ。私もその頃、ロングボードではサーフィンしなかったな。みんなロングボードなんかは、どこかにしまっていた。古いロングボードのグラスを剥がして、短く攻撃的なボードにシェイプし直したりしたよ。多くの美しい板を、私たちは破壊したんだ。今だと、すごい値打ち物になるものばかりだったはずさ。まぁとにかく、そういったことをいっぱいやっていると、たしか70年代のあるころ、長い間波がぱったりと無くなった時期があってね。そんなときに、私と友人たちはしまっていたロングボードを取り出してサーフィンしてみたんだ。それからは、短くて攻撃的な板は見向きもしなくなったね。今でももちろんショートボードには乗るよ。スラスターとか、ツインフィンとか。ただやっぱりロングボードに戻ってしまうんだ。やっぱり、すごく楽しいからね。ニーパドルして波を掴み、グライドして、波の一部になるんだ。あの70年代中盤には、私たちはすでに新しいロングボードのデザインを試していたんだよ。ロングボードがメインストリームに舞い戻ってくる、はるか昔だろう。大変な数のサーファーたちから野次られたけどね。「ロングボーダー出て行け!」とかね。「そんな木偶を持ち出すな!」とかさ。彼らは相当ロングボードが嫌いだっただろうね。自分の10倍は波を取れるのだから、当たり前かな。まぁそんなことをしているうちに、ロングボードは復活を遂げたんだ。最近私は7’8”のボードばかり乗っている。これも、古臭いものになるのかな。60年代後半の、ちょうどVボトムのようなデザインで、でもVを入れていないボードなんだ。全体的に幅が広めで、長さを抑えてある。最高に調子がいいボードで、本当にその板ばかり乗っているよ。たまにロングボードも乗るよ。波が小さくて、あまり良くないときにね。
R: 普段はどこでサーフィンしているの?
M: それは教えられないな、秘密のベストスポットだからね(笑)。まぁ、楽しそうなことならどこでも。たまにサンオノフレとか、ちょっと北に上がったりとかする。たいていは仕事前にちょっとハンティントンエリアでのサーフィンになるね。たまに息子と一緒にハンティントンピアで入ったりすることもある。でもやっぱり、このあたりで波が一番良いところかな。
R: サーフィンの限界を押し上げている人たちって誰かな?
M: 全体的にみたら、やっぱりケリー・スレーターなどといったサーファーだと思う。彼らはこのスポーツに対して非常に献身的で、いつも新しいことにチャレンジしている。私が思うに、そういったサーファーたちはただただサーフィンを楽しんでいるんじゃないかな。ツインフィンや70sスタイルのサーフボードなんかをリバイバルしたりと、過去のものごとにもしっかりと目を向けているようだし。サーフィンの進化が停滞してしまわないように、彼らは常にプッシュしつづけているんだ。たださっき言ったように、彼ら自身がもっともサーフィンを楽しんでいるのは確かだろうし、古いものを新しいものに変えていこうとする、もしくはそれ以上のことを成し遂げようとしているんだ。一箇所に留まろうせずに、スラスターだけに乗るとか、360だけやりつづけるとかじゃなくてね。サーフィンの限界をプッシュし続ける人たちというのは、新しいものにチャレンジして笑顔でサーフィンしてる彼らなんだろうな。
R: カリフォルニアで行くべきところって?
M: 最近、私は北のほうにいくことが多い。とてもいいところだよ。ワイルドで、人の手が入っていないところもあるし。水温は私にはちょっと冷たいけど、それも時期によるし。まぁ、好きなんだよ。みんなフレンドリーだし、くだけた感じだしね。一昔前のカリフォルニアを思い出させてくれるんだ。あの頃は平日の海なんて、探せばどこかでグッドウェーブが誰にも乗られずに割れていたんだ。今じゃ平日もすごい数のサーファーが沖で波を狙っているだろう。最近は誰も仕事がないからね。私は混雑するところが嫌いだから、正直サーフィンの楽しみは数割減だね。特に誰かに怒鳴ったりとか、怒鳴られたりとかうんざりするよ。サーファーのブイをかわしながら波に乗るとかさ。カリフォルニアなら中央カリフォルニアあたりがいいね。そのあたりならいつだって、素晴らしい時間を過ごすことができるんだ。端的に言えば、カリフォルニアはもう人で溢れかえっている。というか、世界中が混みあっているんだよ。莫大な金額を投じて、何時間も飛行機や車の中で過ごしてサーフトリップにでかけると、すでにそこには50人くらいの人がサーフィンしてるんだ。そんなの、やめておいたほうがいい。

R: マイクにとって、カリフォルニアは特別なもの?
M: もちろん。生涯ほとんどの時間をここで過ごしている、ホームだからね。でもやはり、ここは本当に変わり果ててしまった。ハンティントン付近なんか、特にね。ちっぽけな、田舎町だったのにね。それがいまじゃ、メトロポリスでしょ。ヘリコプターが常に飛んでいて、人はそこらじゅううろうろしてるし、携帯電話に、とにかく大混雑だよ。すごく、住みやすいところだったんだけどね。やっぱり一箇所に人口が集中するのって良くないことだと思う。1960年頃に私がハンティントンに引っ越してきたとき、たしかちょうどサーフィンブームが始まったころだったけど、それでも今よりもずっと住みよい環境だった。フェンスなんてほとんどなかった。今でもドライブしていると、「あ~、あそこは良いところだったなぁ」なんていうフラッシュバックを見ることがあるんだ。セントラルコーストでは、当時の情景を今でも見かけることができる。たまに思うんだ。今あるテクノロジーや私が持っている知識なんか持ったまま当時にタイムスリップできたら楽しいだろうなとか。あの頃のカリフォルニアを、私はもっと楽しむことができただろうからね。いや、でもきっと相当に楽しんでいたんだろうけどさ。ただこんな風に、この場所が変貌をとげるとは思っていなかったんだ。こんなにも、別の場所になってしまうとはね。まぁ、人生は続いていくから。
R: 何がマイクにとって幸せ?
M: とりあえず、このインタビューから開放されることかな(笑)。えっと、サーフィンに旅行。新しい出会い。私の削った板を受け取りにきて、飛び跳ねたて喜んだり嬉しそうな顔をみたり。わざわざ電話をかけてきてくれて、サーフボードがすごく調子が良かったなんて連絡をもらったり。本当に最高のフィーリングだよ。自分が作った乗り物で、誰かがサーフィンをして究極の快楽を得ているんだ。私が作ったものがそれを可能にしているんだ、と思える。私は、クラフトマンになりたんだよ。今このときも、それ以外にやりたいことは思いつかないね。まぁ、あとは世界の経済が良くなってくれればよいと思っているよ(笑)。
R: じゃあ次のムーブメントは?
M: 難しいね。一日一日、という感じでやってきているし。願わくば、まだしっかりと私自身の両足で立って、シェイピングとサーフィンを続け、楽しむことだね。
R:じゃあこのインタビューから解放するよ。いっぱいシェイプもたまってるみたいだしね。本当にありがとう、マイク。
マイクのボードをオーダーしたい方は、彼のホームページをチェック: http://www.hbshaper.com/
マイクがヘッドシェイパーを務めるロバートオーガストサーフボードでもマイクシェイプのボードが手に入る: http://www.robertaugust.com/
日本でマイクのシェイプを手に入れたい方はRobert August Tokyoをチェック: http://www.ra-surf.com/
Interview and Photo by Kenta M.
Editted by Dylan O.
R:じゃあこのインタビューから解放するよ。いっぱいシェイプもたまってるみたいだしね。本当にありがとう、マイク。
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Interview and Photo by Kenta M.
Editted by Dylan O.











