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アンドリュー・キッドマン、彼は執筆活動、音楽、映像、そして写真という複数の異なるメディアによってサーフ・カルチャーに多大な影響を与えている。個人的な話になってしまうのだが、ある時期に筆者はサーフィンからかなり長い期間遠ざかっていた。アグレッシブで大会に勝つためだけのマニューバーが席巻していた当時のサーフ・シーンに嫌気が差したからだ。ニューヨークに移り、音楽やクラブの散策に没頭していたころには、そんな「人に勝つ為のサーフィン」を顧みることはほとんど無かった。あるとき、縁あってサーファーズ・パスという雑誌に向けて仕事をするようになった筆者は、とある知り合いからアンドリューのアートワークを見せられた。そして、あっという間にアンドリューの造りだす世界に引き込まれてしまったのだ。
まだまだサーフィン界も捨てたものではない、そう思わされた。コンペ・サーフィンが未だメインストリームを欲しいままにするその裏では、少なからぬ数の人たちがただただサーフィンという極めて美しい行いのためだけに活動しているようだ。アンドリューもまた、サーフィンというどこか得体の知れない、非常に個人的な経験からインスピレーションを受けている。
サーフ・シーンに多くの新しい流れを生んできたアンドリューは、 写真、映像、執筆活動、音楽、ボード・シェイピングなど、実に多彩なものごとに手を染めている。また、サーフィン界で影響力の強いアイコンたちのイメージや言葉を、彼は実に上手く切り取る事ができるようだ。こういった行為は名誉や富をアンドリューに与えるわけではないのだが、満足のいくものなのだろう。妻と子供と共に歩む生活のなかで、彼は自身の情熱を追い続けている。ジャック・ジョンソンは雑誌RollingStoneのインタビューで、アンドリュー制作のフィルム”Litmus”がジャックの人生において最も影響を受けたサーフ・フィルムだと語っている。マルチに活動するアンドリューは今ままで、数枚のアルバムを制作し、大作サーフ・フィルムである “Litmus”と “GlassLove”を送り出し、いまやコレクターズ・アイテムである“Either”を纏めあげた。
アンドリュー・キッドマンという存在を知らないあなたにも、アンドリューのファンであり彼の作るアートワークが大好きなあなたにも、筆者とアンドリューの会話はかなり興味深いものとなっていると思う。今回Re:Calが行った彼に対するショート・インタビューは、ある意味、アンドリューがサーフィン・コミュニティーに与えてきた影響を顧みることになるのかもしれない

Re:Cal (以下、RC)「物書きを始めたのはいつくらいから?はじめて出版した作品、もしくは“ホームワーク”ってなんだったの?」
Andrew Kidman (以下、AK)「15歳の時だね。Tracks社でインターンをしてたんだけど、そのときにグレッグ・アンダーソンにインタービューしたんだ。」
RC「過去から現在までの作品のなかでの1番のお気に入りって? 作品自体でも,
取材のためのトリップとかでもいいんだけど。」
AK「難しいね、全部楽しかったからね。だから1番の、って言い切る事はできないかな。どこか新しい場所へ旅をして、波に乗って色々な人とあって、彼らの文化にふれたりすることは僕にとって生き甲斐といってもいいものだよ。うん、全部よかったな。」
RC「じゃあ1番最初に自分で現像した写真のこととかって憶えてる?どこかにかざってあったりとかするの?」
AK「いや、あんまり憶えてないな。ただビーチにいた鳥の写真を撮って、自宅の屋根から見える波も同じフィルムで撮って、あと枯れ木もそのときに撮ったかな。今でも同じような写真を結構撮ってるんだけど、それって何かおもしろいよね。」
RC「そうだね。じゃあアンドリューにとって写真って一体どんなものなの?被写体を追い続けるっていうのは、君にとってどういうことなの?」
AK「 実際自分のなかでは、被写体を追い求めるってことは、ないかな。自分が面白いと思ったものを撮ってるだけだしね。時々、風景とか誰も乗ってない波だとかをみて写真の構図みたいなのが頭に浮かんだりすると、カメラを取りにいって浮かんだイメージに沿ったものをとることはあるよ。ただ、普段は単純に自分の中にうまれたインスピレーションを切りとってるんだ。たまにそういったものが頭の中にでてきても、写真を撮らずにただ楽しんでる事とかあるくらいだしね。」
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RC「じゃあ映像を撮ろうとしたのも、フォトグラフィーから影響を受けてのものなの?」
AK「いや、そうじゃないと思う。写真と映像は全く別もののメディアとして捉えているよ。一方で学んだ事をもう片方に生かすことはできるし、助けになるとは思うけどね。ただフィルミングとか、映像だとかはもっといろいろ別のことから影響されてると思う。テーマとか、ナレーションとか。」
RC「フィルムに関して影響を受けた人、もしくは物事は?リトマスがはじめての作品となったの?」
AK「ハイ・スクールのときには映像をつくっていたよ。誰かがカメラを壊したときにやめちゃったけどね。ウェイン・リンチ、ディレク・ハインド、アルビー・ファルゾン、ジョン・フランク、マーク・サザーランド、テイラー・スティールといった人たちに影響されてリトマスをつくりはじめたんだ。」
RC「自分が撮りたい写真を撮るっていってたけど、それって教えられたことなの?自分が目で見て感じたことをフィルムに映すことを、教えてくれたものとかある?」
AK「ヒュー・マックレオが撮ったサーフィンの写真が好きなんだ。彼は一時期雑誌サーフィン・ワールドをオーストラリアで取り仕切っていた。トニー・ノーランは僕に写真や、人生そのものを教えてくれたな。他にもいっぱいいろいろな人が、あぁ、ジョン・セヴァーソンのフィルムや写真もいいよね。アルビー・ファルゾンのフィルムとか最高だし、本当に多くの人が僕にいい刺激を与えてくれているよ。世の中にはいつも誰か、人に対してポジティブな影響を与える人がいると思うんだ。」

RC「Val Dusty制作前にはもう音楽に没頭していた?それともフィルム用の音楽が君を音楽へとプッシュしたの?」
AK「僕は子供のころからずっと音楽に関わってきたよ。ヴァイオリンを5歳から16歳になるまでやっていたしね。16歳になって、ギターにコンバートしたんだ。」
RC「じゃあアンドリューが計画している次のアドベンチャーって、なにかある?」
AK「とりあえずバンド活動をするかな。歌詞を書いたり、音を入れたりね。バンド最高だよ、サウンドトラック作ったりジャム・セッションしたりさ。前に作ったアルバムを聞きなおしたりするのも、かなり楽しいし。出来が良かったのも悪かったのもあるけど、僕は両方同じくらい好きだったりするよ。」

RC「そうなんだ。じゃあ次はシェイピングについてなんだけど、何でシェイピングや、もしくはシェイパーに対してそんなに興味を持つようになったの?」
AK「僕はサーフボードに誰かが施したデザインが、波の上での動きに与える影響とかにすごい関心があってね。本当に面白いよ。だってそれって正解も間違いもないことだし、無限に可能性のある終わりのない作業だから。シェイピングって、すごくプライベートな旅のようにもみえる。いくつかのラインを削りだすのに、何年も費やすこともあるしね。」
RC「もっとシェイパーたち対して公の関心が集まるべきだと思う?金銭的に見ても、世界中のサーフ・インダストリーのなかでは、あまり優遇されているようには見えないよね。体に良い仕事ではないから、401K’sとか、健康保険とかあったらいいのにね。」
AK「間違いなくそう思うよ。シェイパーたちの存在や、彼らが持つ知識やアイディア、それに歴史などがなかったら僕たちは『サーフィンって何?』ってことになるよね。サーフボードも現状の2倍、いや3倍の値がついてもいいと思うし、シェイパーたちもそう主張してもいいと思う。『それだけの価値がある!』ってね。難しいことだけどね。だってそんな風に言うと他の誰かが、『もっと安くできる』と言い始めるだろうしね。本当に難しいポイントだよ。世界中探してもこれだけ制作費が掛かって、もうけが少ない、10%から20%しかないインダストリーってないと思う。僕の場合、自分が削った板の値段が高すぎるとか言われるときには、その人に対してこう言うんだ。『自分で作ってみることをお勧めします。』『(かなり有害なシェイピングに対しての)見合う対価をもらっていない』、とサイモン・アンダーソンもいってるしね。」
RC「もう一度行ってみたいと思わされた旅のデスティネーションは?もう1回いっていろいろなアートワークに取り入れたいところって?」
AK「全部、だね。ニューヨークとかスペインとか、特に。」
RC「じゃあいま一番行きたいところは?」
AK「ニューヨーク、サンディエゴ、スペイン。」
RC「じゃあカリフォルニアにおいてアンドリューが特別意識する場所は?何度も訪れたいところは?」
AK「僕はカリフォルニアが大好きなんだ。フリーウェイとか大都会とかは、まぁぼちぼちだけど。でも砂漠とか山とか。セントラル・カリフォルニアとかいいね。スタインベック・カウンティー、ビッグ・サー、あとは北サンフランシスコに向かう道のりとかは最高、それ以上だね。サンディエゴもいいね。リーフとか、そのあたりは波が良いし。本当にいい場所だよ。人もいいし。ちょっと寒いけど、季節的には冬がやっぱりいいよね。波も良くなるし。なんかこう、違うエネルギーを感じるよ。」
RC「カリフォルニアに来たときの、食べ物とかは?気に入った店とかある?」
AK「メキシカン・フード!カリフォルニアに行ったときはそればかりだね。オーストラリアは世界で一番まずいメキシコ料理が揃ってる国だと思う。LAに住んでる友達はいつも本物のメキシカン・レストランに連れて行ってくれるんだ。そこはオールド・スクールな、ある家族が経営してる場所。店の見た目が怪しげなほど、メキシコ料理って美味しいよね。」
RC「カリフォルニアを訪れたときに必ず行くべき場所って?どんなところでもいいんだけど。」
AK「メキシカン・レストラン。あとは僕の親しい友人たちがいる南カリフォルニアのサーフ・スポット。隠れスポット的なポイントでみんなと波乗りするんだ。最高だよね。数年に1度くらいのペースでしかカリフォルニアを訪れる事ができないから、結構忘れがちだけど、いつも本当にいい時間を過ごすことができるよ。」
RC「カリフォルニアに住む人物でアンドリューに影響を与えた人っている?ジャンルを問わずに。」
AK「いっぱいいるよ。スキップ・フライ、リチャード・ケンヴィン、ハンク・ワーナー、ジル・ジョーダン。ハロピーやオールドマン・ハンズの音楽。アンディ・ディビス、ボブ・ミッツベン、カイル・フィールド、パーメンター、リズ、プレスクナス、スティーブ・ペズマン、ジョン・セヴァーソン、ほかにもいろいろ。」

RC「まだスイフトには板を提供しているの?」
AK「いや、いまはもう自分や親しい友人たちに削っているだけだよ。」
RC「今年のグリーンルーム・フェスティバルには行くの?」
AK「どうだろうね。誰も連絡をくれてないからね。」
RC「じゃあ今は音楽とか、フィルムとかに集中しているの?」
AK「いろいろ、ちょっとづつ進めているよ。いいのかどうかわからないけど。ガラクタの塊みたいになっちゃうかもしれないし。現段階では、とりあえずアイディアをまとめるプロセスにいるかな。うまくいくといいんだけどね。」
RC「子供を授かって変わったことがある?君が抱えるプロジェクトとか、活動にフォーカスする上で。」
AK「プロジェクトの進行とか、途中で止まったりするよね。でも、子供たちと家族がいまの僕には最優先事項なんだ。ご飯をあげたり、家事をしたり、できることを何でもしようとしてる。トリップにいくのも長期間いけないけど、彼らから離れることはできないな。子供が側にいないのは嫌だし、彼らからあまり遠くに離れないように努めているよ。フィルムとか作ってるときには、それってすごい難しいんだけどね。子供たちをつれていければ一番いいんだけどね。」
RC「子供を持つことって新しい生活の始まりなんだろうし、今まで持たなかった考えがでてくるんだろうね。彼らの成長をもっと見たいと思うし、記録なんかつけたくなったりするのかな。子供たちがいて、以前にくらべて君のサーフィンへの関わり方とかに変化は出た?。」
AK「いや、あんまり。でも芸術活動に関していえば、かなり大変だよね。今までどおりに自分に対して時間を割くことができなくなっているし。単純に、自分にかけられる時間がないんだよ。『そういうものだし、とりあえずそのままやっていくしかない』なんていう人もいるけれど。でも、子供を持たない人たちには、すこし理解し難いみたいだね。アーティストとしては、いくらか自分の考えだけにつかる時間が必要なんだ。自分勝手に物事を進めたり、とね。でもそれって子供を持つと本当に難しくなる。僕は自分の子供たちを愛しているからね。子供たちとの時間がかけがえのないものになっているんだ。だから本当にタフな問題だね。答えが見つからないよ。子供を持つすべての大人がこの現実に苦しんでいるんだろうね。」

RC「そうだね。じゃあ君の次のアクションは?」
AK「2,3のプロジェクトを進めているよ。The Brown Birdsはマイケル・ピーターソンのフィルムに提供するサウンドトラックを収録し終えたばかりで、その映像ももうすぐリリースされるはず。今回僕たちは、オーストラリアではレジェンド・ギタリストであるティム・ゲイズと一緒に活動したんだ。最高に楽しかったよ。そして幾つかのフィルムも製作中なんだ。SPUNKというレコード・レーベルとコラボしているフィルムもあるよ。彼らは良質の音楽を提供しているよ。アルバート・ファルゾン、モンティ・ウェーバー、ジョン・フランク、パトリック・トレフツ、それにリチャード・ケンヴィンなんかがショートフィルムを提供してくれているよ。サーフ・カルチャーにおいても、かなりユニークなんじゃないかな。とても美しくて、思慮深く物悲しげな、でもとても綺麗なものになる。
でも最近は、the Brown Birdsの活動に集中しているかな。家族や子供たちを養っていくために稼がないといけないしね。かなりその日暮し的な生活だけど、でもそれってほとんどの人が経験するものだと思うんだ。そのうち良い方向に向かうと思う。それに、こういった暮らしも良いものだよ。大事なものを、本当に大事に思えるようになるからね。美味しいご飯とか、家族とかクリエイティビティだとかね。現実とはつまり、”distraction”なんだと思うんだ。」
ここで筆者らは、アンドリューを少々長いインタビューから解放することにした。
彼は家族のためにディナーの準備を始めている。
それは彼の溢れるばかりの才能のひとつだと思った。
またすぐに会おう、アンドリュー。
また彼は親切にも、下記のアドレスを教えてくれた。
アンドリューのアートワークや、また彼自身をもっと知りたいと思ったなら、下のアドレスにコンタクトをとってみよう。
Andrew Kidman
P.O.Box 174
Uki, NSW,
2484
Australia
http://www.litmus.com.au
http://ether-kidman.blogspot.com/
Text by Lou Niles
Photo by Andrew Kidman, Lou Niles,
Art work by Andrew Kidman, Mark Surtherland
Interview with Andrew Kidman
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